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この素晴らしき世界
1996年に発生した謎のウィルスにより、全人類の約99パーセントは死滅した。そして2035年、地下に住んでいた人間たちはその原因を探るため、一人の囚人を過去へと送り出す。糸口はたったひとつ、“12モンキーズ”という謎の言葉のみ。しかし主人公コールが送られたのは事件が起きる6年前、1990年だったのである。彼はそこで精神病院に入れられてしまい、謎の男ジェフリーに出会うのだが……。
2035年、ちょうど今から20年後、全人類の約99%が死滅する。ということは、『バイオハザード』シリーズ並みの人類死滅率でしょうか。ただ、『12モンキーズ』には頭がぱっかーんと割れてしまうような特殊ゾンビを含めゾンビは登場しません。そういった生々しい描写は排除されていますが、陰鬱な地下生活と廃墟と化した地上世界によってウィルスの恐怖が視覚的に知覚的に感じられます。主人公コール(ブルース・ウィリス)のいる空間は檻に囲まれ、檻の外も全体的に錆びた金属のような色合いの空間です。そして地上は真っ暗で、生気を感じません。見ているだけで、呼吸がしにくくなるような鬱屈した気分になります。
この死のウィルスによって汚染された地球を何とかするために、コールがタイム・トラベルします。そのためのタイムマシンは技術が未発達なので、とんでもない時代・場所・恰好で過去に行くことになります。でも、ドラえもんのタイムマシンが22世紀に完成するのですから、これくらいの完成度でしょうね(笑)コールが行った時代とコールがその時代で残してしまった爪痕は主軸のミステリーを解き明かすクルーになるので、どのシーンも注意して観ておきたいです。点と点が線で繋がった時の快感はたまらないですよ。
ここからネタバレ有りで感想を書きます。未見の方は、ご覧になってから続きをお読みください。
映画のエンド・クレジットで僕は「えっ?」と思いました。なんで、ルイ・アームストロングのWhat a Wonderful Worldなのだろう…。だって、結局コールはウィルスの拡散を防ぐことはできず、人類は死滅するんです。それなのに、色鮮やかに輝く世界への賛美が最後に歌われる。皮肉ともブラック・ジョークとも受け取れます。しかし、コールの視点で見ればどうでしょうか。コールはウィルスの蔓延した「死の世界」で生きることに嫌気がさしていました。アームストロングが歌っている「生の世界」で生涯を終えたいと望むのは当然です。「生の世界」とは、子供たちが笑い、鳥、虫、獣、草木花の溢れる世界。コールはこの世界に対する賛美を胸に息絶えていったとしたら、What a Wonderful Worldの選曲はピッタリなのでは?
そう楽観的に考えると、これはこれでコールさん幸せだったのかもと思えるようになりました。観終わった直後は、なんて後味の悪い映画なんだろうと思いましたが…。視点を変えれば様々に解釈できる映画なので、とても楽しめました。
それでは良い週末をお過ごしください。
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